福島国際研究教育機構(F-REI)の知見と地域のアイデアを掛け合わせ、新たな価値を生み出す「F-REI地域連携加速化補助金」。
今回は、公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会が主催する「いわきものづくり塾® F-REI連携・共創コース」の第1回講義の様子をレポートします。
■ 多様な人材が集う「共創」のキックオフ

本コースは、F-REIの先端研究を起点とした事業構想の創出から、連携テーマの検討・整理までを一体的に支援し、地域との継続的な共創関係を築くことを目的とした全8回のプログラムです。 対象は製造業やエネルギー関連の地域企業をはじめ、起業希望者、スタートアップ、学生など、技術の社会実装に関心のある幅広い層です。9月10日、いわき産業創造館を会場に、初回講義がスタートしました。
■ 過酷環境に挑む最先端ロボティクス(角課長による講義)
初回の講師を務めたのは、産業技術総合研究所から出向し、F-REIでロボット分野の研究開発を推進するF-REI研究開発推進第一課 角課長です。
講義のテーマは「過酷環境に向けたUAV/UGV技術とF-REIロボット分野の取り組み」。近年、世界的にヒューマノイドロボットが注目を集めていますが、実際の災害現場などの「リアルな環境」では、泥や瓦礫といった地形的複雑性や、濃霧・粉塵による視界不良、極度の通信途絶など、従来型ロボットには多くの制約が立ちはだかります。
こうした中、F-REIが焦点を当てるのは、強い放射線や極端な温度など「人間を含む一般的な生物の生存条件を大きく逸脱した環境(=過酷環境)」です。福島における「廃炉」や「災害対応」など極めて難易度の高いミッションで活躍するロボット技術の研究こそが、F-REIならではの重要な役割となります。
角課長は、現場で求められる技術要素として、以下のポイントを挙げました。
○高い機動性・走破性:
瓦礫の山を登るクローラ(キャタピラ)や多脚(歩行)技術。
○多様なセンシングと認識技術:
煙の影響を受けずに測定できる技術(LiDAR)や、熱源を検知するサーマルカメラなどを組み合わせた悪環境下での確実な情報収集。
○異種混合システムの運用:
「1台の万能ロボット」に全てを任せるのは不可能であり、探索や搬送など、それぞれ得意分野の異なる複数のドローンや地上車両を組み合わせて運用することが現実的であるという視点。
ロボットの実用化に長年挑み続けてきた角課長だからこそ語れる、臨場感あふれる経験とノウハウが詰まった内容に、参加者は熱心に耳を傾けていました。


■ 参加者の声:異業種から見るF-REIの可能性
今回の参加者は、製造業だけでなくシステム開発、燃料、介護、学校など非常に多岐にわたります。講義後、参加者の方々に率直な感想を伺いました。
合同会社Any 代表社員・鈴木ゆかりさん(介護事業)
「ドローンやロボットが災害環境で活躍できるというお話は非常に勉強になりました。私は介護の事業に取り組んでいるのですが、介護施設における災害対応は極めて重要な課題です。自分自身も被災する状況下でロボットの力を借りて現場対応ができる未来に、大きな期待を感じています。今では、介護現場でも生産性向上やDX化が求められています。そうした状況の今、今回の講義で多くの学びや気づきを得られました。次回以降もぜひ参加します」

地元企業 参加者の声
「企業側に、自社事業の成長につなげられるようなメリットを見つけてもらう仕組みづくりが大事だと感じました。費用面だけでなく、最先端技術のノウハウが展開されることが重要です。F-REIを中心としたサプライチェーンの構築や地元への理解促進が、新たなビジネスチャンスのきっかけになると実感しました」

■ 運営・高岡様が語る「共創」への期待と今後の展望
最後に、本事業を牽引するいわき産学官ネットワーク協会の高岡洋平事業推進係長に今後の展望を伺いました。
「こうしたセミナーを通して、F-REIという存在をいわき市内に広く浸透させていきたいです。今年は新規の参加者が多く、業種の広がりを感じています。また、本コース内でマッチングイベント『HAMA-HUB』に参加し、いわきや大熊町のスタートアップ企業と地域を繋ぐことで、お互いの事業を深く理解し合い、地域の活性化に繋げることが意義深いと考えています。参加者の皆さんには、まだ構想段階であっても、F-REIの先端技術を活用する『何かのきっかけ』をぜひ掴んでいただきたいですね」

F-REIの高度な知見を地域の多様なプレイヤーにお伝えした第1回講義。ここからどのような事業構想が生まれていくのか、今後の展開に期待が高まります。