福島国際研究教育機構(F-REI)の知見と地域のアイデアを掛け合わせ、新たな価値を生み出す「F-REI地域連携加速化補助金」。
採択事業者の取り組みをご紹介するシリーズ、今回は「株式会社ゆめサポート南相馬」の第1回目です。

南相馬市を拠点に、企業の誘致や起業支援、人材育成を通じて地域の産業創出を牽引する同社。今回は、取締役所長の木村浩之氏にお話を伺い、F-REIと連携して取り組むロボット分野の技術者育成事業「Cross-Tech育成塾2026」の背景と、地域がF-REIに寄せる期待について語っていただきました。

■ 事業者プロフィール

法人名: 株式会社ゆめサポート南相馬
所在地: 福島県南相馬市原町区萱浜字巣掛場45-245 南相馬市産業創造センターB棟内
代表者: 代表取締役社長 遠藤充洋
事業概要: 南相馬市を中心とした相双地域の産業振興を目指し、創業支援、企業誘致、新産業(ロボット、航空宇宙等)を担う人材育成など、多角的な支援を展開しています。

株式会社ゆめサポート南相馬 木村浩之取締役所長。相双地域の次世代産業を担う人材育成や企業支援に長年携わっています。

■ エントリーのきっかけ:震災による分断と「新たな産業」への渇望

今回の育成事業の根底には、東日本大震災によって地域の産業が受けた大きなダメージがあります。木村氏は「震災により多くの産業が休止状態に追い込まれ、地域のサプライチェーンが途切れてしまいました。仕事を受けていた製品の生産ができない状況が続いて他県へ発注が流れてしまうと、復旧してもそれを元に戻すということは非常に厳しいです」と当時の苦境を語ります。

そこで目を向けたのが、南相馬地域で芽吹き始めていた「ロボット・航空宇宙」という新しい産業分野でした。
「ただ部品を作って待っているだけではダメだ、主体的にベンチャーなどの新しい分野と手を組まなければならないと思いました。そのためには、メカニクス(機械)とソフトウェア(制御)の両方を横断的に理解し、コーディネーションできる『Cross-Tech人材』の育成が急務でした」と木村氏。

「実は、ゆめサポート南相馬、福島相双復興推進機構、テクノアカデミー浜、南相馬ロボット産業協議会の4団体は、数年前から合同で新人研修を行うなど、人材育成の構想を練り続けてきました。そこへ、世界中の最先端技術を集めて研究開発を行うF-REIとの連携事業の公募があり、地域のニーズとF-REIの知見提供の方向性が合致し、エントリーに至りました」

■ 日本のものづくり精神を武器に、F-REIの「要求」に応えられる地域へ

木村氏は、ロボット開発について「単にメカを作るだけでなく、ソフトウェアのエキスパートでなければ連動できません」と語ります。しかし、そこに日本の強みがあるとも分析しています。

「日本の製造業はソフトとハードを組み合わせるのが得意です。守備範囲を限定せずに、他社とも連携して要求に対応できるよう努める。その対応力は『オーバースペック』とすら言えるほどです。この文化はロボットの領域と非常に相性が良く、新しい技術を目指す上で活きてくると考えています」

だからこそ、F-REIには「新しい最先端技術の提示」と、地域がどこを目指すべきかの「指針」となることを期待しています。

「外部からの大きな力が、地域の底上げの誘因になってほしい」と、F-REIとの連携に大きな期待を寄せる木村氏。

■ 事業の概要:昨年度から進化した「実践的カリキュラム」

「Cross-Tech育成塾2026」は、南相馬ロボット産業協議会加盟企業の若手技術者を対象とした、全8回の実践的なカリキュラムです。昨年度の実施成果を踏まえ、今年度はより「実践的な連携」と「横断的な知識の習得」を目指して内容をアップデートしました。

○コース統合による「Cross-Tech」の体現:
昨年度は制御系とメカニクス系でバラバラに行っていたコースを統合。メカ設計からプログラミングまでを一貫して学ぶことで、ロボット製作に向けた横断的な知識を得られるよう改善しました。
○F-REI特別講義とワークショップの新設:
F-REIから講師を迎え、最先端の知見に触れるとともに、今年度は新たに受講生や企業経営者を交えた質疑応答の場を設けます。F-REIとの具体的な連携を自ら検討し、ビジネスのきっかけを作る場へと深化させています。

現在は受講者を募集している段階であり、「見据える未来を伝えるため、F-REIの講習部分のカリキュラムをより具体的に調整しているところ」とのこと。この分野だったら聞いてみたい、と身近に感じてもらうための「翻訳」が必要で、若い人たちに、F-REIを通じて違う世界を見せる機会になればと考えているそうです。

昨年度実施された「Cross-Tech育成塾」の様子。地元企業の若手技術者たちが実践的な技術習得に励んでいます。
メカニクス(機械)とソフトウェア(制御)を横断的に理解する「Cross-Tech人材」の育成は、地域産業の将来を担う重要なミッションです。

■ 本事業内で目指す成果:地域の底力で本気のビジネスチャンスを掴む

本事業の最終的な目標について、木村氏は現実的なビジョンを描いています。

「F-REIとの信頼関係を築き、地域でのビジネスチャンスに繋げていきたいです。F-REIがこの地で活動する経済効果を最大化し、地域が本気でそれに応えていくことが重要です」
単なる技術講習にとどまらず、F-REIとともに世界を見据える本気の「人材育成」。 次回以降のレポートでは、ロボット製作などの実践的な講座や、F-REI講師を迎えた講座の様子をお届けします!お楽しみに!