福島国際研究教育機構(F-REI)の知見と地域のアイデアを掛け合わせ、新たな価値を生み出す「F-REI地域連携加速化補助金」。 公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会が主催する「いわきものづくり塾®F-REI連携・共創コース」は、これまでの講義フェーズを経て、いよいよ参加者自身が事業構想を練り上げる「応用ワークショップ」フェーズへと突入しました。

今回は、10月9日にいわき産業創造館のIT研修室で開催された「応用ワークショップ① 課題抽出とテーマ設定」の模様をレポートします。

■ 「ビジネスの種」は、論理と情緒の合意形成から生まれる

今回のワークショップで講師・ファシリテーターを務めたのは、株式会社ロードフロンティア 代表取締役であり、ビジネスモデル・ファシリテーターの並木将央氏です。

ワークショップの冒頭、並木氏は「ビジネスを生み出すために、何を学ぶ必要があるのか?」という本質的な問いを参加者に投げかけました。
「日本で新しいビジネスが生まれにくいのは、困っている人が見えにくいこと。そして変化をマイナスと捉えがちな土壌だからです」
「ビジネスとは端的に言えば『価値を与えて対価を得ること』。相手が『購入したい』『購入できる』と思える価値を創り出さなければなりません」

また、ビジネスプランを相手に提案し、共感してもらうためのコミュニケーションの重要性についても言及。「日本人は『文脈(コンテキスト)』で察する文化ですが、ビジネスを共に創るためには、言葉や計画という『コード』が必要です。論理的なやり取りに、情緒的な交わりを掛け合わせて合意形成していくことこそが、ビジネスの種になります」と語りました。

講師・ファシリテーターを務めた株式会社ロードフロンティアの並木将央氏。「論理と情緒の合意形成」というビジネス創出の本質について、熱を込めて語りかけます。

■ AI(gemini Notebook)を最強の“壁打ち相手”に

F-REIの最先端技術(シーズ)と、参加者の自社事業(ニーズ)。この2つをどう組み合わせるかが本コースの最大のテーマです。
並木氏は「かつては研究者の頭の中で行われていた『組み合わせ』の作業ですが、今はAIが非常に得意としている領域です。AIを使って対象を細分化し、イノベーションを創り出しましょう」と呼びかけました。

実践ワークでは、Googleが提供するAIノートツール「gemini Notebook」を活用。参加者は実際にPCを操作しながら、自身の事業課題やこれまでの講義資料をAIに読み込ませ、事業の欠点や新たな切り口を提案させる「壁打ち」を行いました。 セキュリティや機能面での不安も、講師に直接教わりながらその場で操作することで払拭され、会場は集中による静かな熱気に包まれました。

さらに、常識を疑う「アサンプションスマッシング」や、アイデアを強制的に広げる「SCAMPER(スキャンパー)」といったクリエイティブシンキングの手法も導入。AIに40個のアイデアを打ち出させ、そこから自社で実現可能な「1つ」を選び取るという、実践的なビジネスモデル構築のプロセスを体験しました。

AIノートツール「gemini Notebook」を“最強の壁打ち相手”として活用。アイデアを細分化し、常識を疑うクリエイティブシンキングで新しい切り口を見つけ出します。

■ 「遠かったF-REIの世界」に、橋が架かった瞬間

ワークショップの最後には、参加者全員が「F-REIの知見を自社事業にどう活かせるか」という初期段階の成果発表を行いました。

ワークショップの締めくくりに行われた成果発表。「テクノロジー×人の力」をテーマに、F-REIの知見を自社事業にどう活かせるか、それぞれの構想を披露しました。

講師の並木氏は、参加者の高い熱量について次のように振り返ります。
「皆さんが『自分にもできる』という実感と、考えるための手法を手に入れたことが大きかったと思います。最初は、皆さんの関わる事業の世界と、F-REIの最先端の世界は、壁があるというか遠く感じていたはずです。しかし、事業と技術を細分化(モジュラーシンキング)し、AIの力を借りて両者に『橋を架ける』ことで、F-REIとの接点が明確に想像できるようになりました。ニーズとシーズを結びつける仕組みづくりとして、こうした「ツール」があることは非常に素晴らしいと感じています」

「事業と技術を細分化し、AIの力を借りることでF-REIとの接点が明確に想像できるようになった」と手応えを語る並木氏。参加者の熱量の高さを高く評価していました。

■ 参加者の声:介護×F-REI、驚きの親和性

第1回のロボット分野の講義にも参加されていた、合同会社Anyの鈴木ゆかりさん(介護事業)は、今回のワークショップを通じてさらなる手応えを掴んだようです。

「前回の講義でも感じましたが、介護とF-REIの技術にこれほど深い関係性が築けるとは、当初は想像もしていませんでした。今回、AIを活用して自社事業とF-REIの要素を細分化し、無数のアイデアを出して組み合わせる作業を行ったことで、『こんなにも相性が良いのか』と驚きと確信がさらに深まりました」

自ら事業アイデアを発表したことで、新たな意欲も湧いたと語ります。
「発表してみて、『もっと深く知りたい』と強く思いました。世の中には様々な先端技術がありますが、単なる技術ではなく『F-REIだからこその技術』を知り、細分化されたパーツを私たちの事業にどう活かせるか、一つ一つ選択していきたいです」

介護事業を展開する合同会社Anyの鈴木ゆかりさん。AIを活用したワークを通じて、介護現場の課題とF-REIの先端技術との「驚きの親和性」に気づき、今後の事業化へ意欲を見せました。

自社の課題とF-REIの知見が、AIというツールを通じて見事にリンクし始めた「いわきものづくり塾®」。次回以降の応用ワークショップでは、このアイデアの種をさらに深掘りし、事業化・社会実装に向けた構想へと練り上げていきます。今後の展開にもご期待ください!