福島国際研究教育機構(F-REI)の知見と地域のアイデアを掛け合わせ、新たな価値を生み出す「F-REI地域連携加速化補助金」。採択事業者の取り組みをご紹介するシリーズ、今回は「学校法人佐野学園(神田外語大学)」の第1回目です。

今回は、本プロジェクトをサポートする法人本部 グループコミュニケーション部 三上山雄亮チーフに、補助金事業にエントリーした背景や、学生たちが真摯に向き合う「多文化共生の地域づくり」への思いを伺いました。

■事業者プロフィール

法人名:学校法人佐野学園(神田外語大学)
所在地:東京都千代田区内神田2-13-13
代表者:代表取締役 佐野元泰

■ 「福島の今」の発信から次なるステージへ。F-REIがもたらす新たな人の流れ

神田外語大学を擁する学校法人佐野学園は、1994年に天栄村へ「ブリティッシュヒルズ」を創設するなど、福島県と長く深い関わりを築いてきました。2023年には福島県と包括連携協定を締結し、学生が福島について学び、地域の方々との交流を通じて復興や地域の未来について考える取り組みを進めています。

「本学として福島のために何ができるかを考えたとき、『FUKUSHIMA』という風評に対し、福島の今を正しく海外に発信することで力になれるのではないかと考えました。そこで昨年度は『震災復興発信プロジェクト』として、学生たちがF-REIや浜通り地域を訪問し、復興の歩みや地域で新たな挑戦に取り組む方々へ取材を行い、学生自身の視点で『福島の今』を日英版の新聞にまとめて世界に発信しました」と三上山氏は振り返ります。

その成果は内堀知事にも報告され、高い評価をいただきました。この昨年度の取り組みが契機となり、福島県から本補助金のご紹介を受けたことが今回のエントリーに繋がっています。

昨年度の「震災復興発信プロジェクト」の集大成として制作された新聞。学生たちが自らの足で取材し、等身大の視点で「福島の今」を伝えたこの成果が、今年度の新たな挑戦への原動力となっています。
昨年度の「震災復興発信プロジェクト」における、東日本大震災・原子力災害伝承館でのフィールドワークの様子。現場に足を運び、自らの目で見て学ぶという真摯な姿勢は、今年度のプロジェクトへもしっかりと引き継がれています。

今年度は、昨年度の取り組みをさらに発展させ、復興が進み、新たな研究・産業拠点として変化していく浜通り地域の「これから」に目を向けます。「現在、浜通り地域では多くの外国人の方々が暮らし、働いています。今後、地域の国際化がさらに進む中で、多様な背景を持つ人々とともに地域社会を築いていくための「多文化共生」の視点がますます重要になります。F-REIは国際的な研究拠点として、海外からの研究者や技術者、そのご家族など、新たな人の流れを生み出すことが期待されており、こうした地域の変化を象徴する存在の一つです。そこで、本学が培ってきた語学教育・異文化理解教育の知見を生かし、外国人を受け入れるための環境や体制について地域とともに考え、その先の多文化共生の地域づくりに繋げていくプロジェクトを企画しました」

■ 語学と異文化理解の知見を地域へ。学生ならではの「フラットな視点」で挑む

事業概要を検討する中で、急速な国際化が見込まれる浜通り地域に対し、神田外語大学として提供できる強みが見えてきました。それが、「語学教育・異文化理解教育の知見」と「学生ならではの偏りのない視点」です。三上山氏は、現在の地域における課題をこう捉えています。

「各自治体でも受け入れに向けた取り組みが進められていますが、地域によって状況や抱える課題はさまざまです。私たちが大切だと考えているのは、安心して過ごせる場づくりです。ただ受け入れて終わりではなく、長く安心して幸せに過ごしてほしいと願っています」

神田外語大学内での事前学習の様子。「受入者側」と「生活者側」双方の生の声をフラットに引き出すため、学生たちが自ら仮説を立て、入念にヒアリングの準備を進めています。

現在、有志の学生たちは毎週火曜の昼休みの時間に、11月に実施する現地フィールドワークに向けた事前学習を進めています。「学生たちはすでに各自治体の外国人向け情報発信などを調べており、『今の発信方法が、海外の方にとって本当に受け取りやすい形になっているか』など、若い感性ならではの気づきが生まれています。11月の現地調査では、市町村などの『受入者側』と、地域に暮らす外国人の『生活者側』の両方にヒアリングを行います。それぞれの立場で考えていることや課題は異なりますので、学生には、片方に偏ることなく、両方の生の言葉をちゃんと聞いてほしいと伝えています」

■ 学生の本気が試される実践の場。国際化が進む浜通りで生み出されるものとは

浜通り地域では、すでに多くの外国人が暮らし、働いており、今後も地域の国際化が進んでいくことが見込まれます。F-REIもまた、海外からの研究者や技術者、その家族など、新たな人の流れを生み出す存在の一つとして期待されています。その国際化の最前線というフィールドに、異文化理解を学ぶ神田外語大学の学生たちが飛び込む。だからこそ、机上の空論ではない「地域と外国人、双方に寄り添った血の通った提案」が生み出される可能性を秘めています。

今年度は、学生たちの「主体性」をさらに引き出すことを目指しています。「例えば自治体の申請様式の改善提案など、実生活に直結した成果物を作るといった責任を伴う目標を設定しており、学生には『お客様として参加するのではなく、自分たちで作り上げるんだ』という本気度とコミットを求めています。貴重な補助金をいただいての展開ですので、大学としてもしっかりと取り組みます」

また、このプロジェクトは、「社会実践の場(プロジェクトベースドラーニング)」でもあります。 「コミュニケーションを標榜する本学だからこそ、いろんな人と話す機会を持ち、『どうやって話を引き出すのか』『相手の立場に立って考えられるか』『それを人にどうアウトプットできるか』を実践的に磨く機会にしたいと考えています」

「受入側」と「生活者側」、双方の立場に立って考え抜くこと。そのプロセスを経るからこそ、最終的な目的である「自治体の受け入れ環境の整備」に本当に役立つ提案が見えてきます。「調査結果を踏まえて成果物を作成しますが、大学から一方的な形で『こうすべきだ』と示すのは良くありません。あくまでサンプルや参考として『こういったものはいかがでしょう』という誠実な提案をしたいと考えています。それが実際の取り組みの参考になり、多文化共生に繋がっていくことが私たちの願いです。今年度で終わりにするのではなく、今後はコミュニティや交流の場所、住環境の整備などにも継続して取り組めたらいいですね」

「一方的な押し付けではなく、実際の参考になる誠実な提案をしたい」と語る三上山氏。今年度の調査にとどまらず、その先の多文化共生までを見据えた中長期的なビジョンを覗かせます。

F-REIという巨大なプロジェクトが地域にもたらす変化のうねりと、学生たちのフラットで実践的な行動力。本気でコミットする学生たちが現地でどのような気づきを得るのか。11月のフィールドワークの様子は、今後のレポートで詳しくお届けします。